①Editor's Column
ナイジェリアのパーティー月間Detty Decemberにみるアフリカ音楽の今
文/成田葵
アフリカでは12月の祝祭シーズン「Detty December」が明け、2026年が幕を開けました。今号では、その熱狂の裏側にある巨大な経済圏の正体から、日本企業によるビール会社の過去最大級の買収案件、さらには南アフリカのゲームの祭典まで、アフリカで起きているダイナミックな動きを凝縮してお届けします。
制作を始める際は「毎月お届けできるほどのニュースがあるだろうか」と少し心配しておりましたが、蓋を開けてみれば、溢れんばかりのトピックに驚く毎日です。日本にいながら記事をまとめていると、現地の熱量に感化され、つい私自身がアフリカへ飛んでいきたくなってしまいます。そんな現地の熱を読者の皆さまにもしっかりとお届けできるよう、これからも筆を執っていきたいと思います。今号もぜひ最後までお楽しみください。
TML Vibez Reflects on a Defining Moment with His First Headline Show in Lagos
毎年12月が近づくと、海外に住むアフリカ系ディアスポラの人々が祖国へと戻ってきます。日本で年末年始に地元へ帰省するのと同じように、アフリカでも12月は「帰る」季節です。近年はこの帰省文化に、音楽フェスやクラブイベント、観光、ホテル、レストランなどの消費が重なり、ナイジェリアやガーナを中心に、都市は一気に活気づきます。人の移動と消費が集中することで、ラゴスやアクラは街全体が祝祭モードに包まれ、年末限定の巨大な経済圏が立ち上がるようになりました。
こうした12月の盛り上がりは、もはや単なる季節行事を超えた社会現象となっています。その象徴的な呼び名が「Detty December」。年末のパーティーシーズンを総称する言葉として、若者文化を中心に定着しつつあります(語源は英語の「Dirty(ダーティ)」で、ナイジェリアなど西アフリカ特有の訛りから生まれたスラングです。ここでの「汚い」は、「理性を忘れて遊び尽くす」というポジティブな意味。2016年頃にスター歌手のMr. Eaziが広めたと言われいます)。
1年前の例にはなりますが、2024年12月にはラゴス州の観光・エンタメ収益が ₦111.5bn(約$71.6m、約100億円) に達し、来訪者は 約120万人。空港流入は 約55万人 で、その 約9割が在外ナイジェリア人 とも言われています。単月・単都市でこれだけの消費が生まれるケースはアフリカでは限られており、Detty Decemberが都市ぐるみの商戦に進化していることが見て取れます。
ナイジェリア・ラゴスは、Afrobeatsと呼ばれるアフリカ発の音楽ジャンルが生まれた都市としても知られています。ただし、ラゴスでは年間を通じて大型コンサートが常に開催されているわけではありません。実際には、Detty Decemberの時期に大物アーティストのライブや音楽フェスが一気に集中します。ナイジェリアだけでなく、ガーナなど周辺国も含め、12月になるとアフリカ各地でイベントが立て続けに開催され、音楽シーン全体が一斉に動き出します。
どのアーティストがイベントの看板を務めるのか、どの公演が完売するのか。こうした動きは、その年一年を通じたアフリカ音楽のトレンドや人気の「答え合わせ」としても機能しています。Detty Decemberはパーティーシーズンであると同時に、アフリカ音楽シーンの現在地を映し出すショーケースでもあるのです。
2025年総括:海外ヒップホップとの混交が加速
2025年は、最近ロサンゼルスに移住したナイジェリア人アーティストAsakeが、2年ぶりに大きく戻ってきた点が国内でも話題になりました。それ以外にも、Remaとイギリス人ラッパーCentral Ceeがヘッドラインを務めたり、アメリカのラッパーGunnaが登場するコンサートがあったりと、Afrobeatsに海外ヒップホップの熱を混ぜる動きが目立ちました。
一方で、Detty Decemberの拡大に伴い、チケット・ホテル・移動費の高騰、渋滞・過密による疲労感といったひずみも顕在化しています。旅行者からは「疲れる」「渋滞がひどい」といった声が増え、ローカル側からは「地元の人が価格で締め出され、楽しめない」という不満も強まりました。決済トラブルなども含め、負の側面が議論される場面も増えています。
「ラゴス一極集中」からの分散、そして国家戦略へ
こうした過密への反動もあり、ラゴス一極集中から、他都市へイベントが分散する兆しも見え始めました。ナイジェリア・デルタ州で開催された音楽フェスでは、WarriとAsabaの2都市で 3万8,000人以上 の若者が集まり、州政府の公式後援も得ました。これまでラゴス以外での大規模イベントは相対的に珍しかっただけに、大きなムーブメントと言えます。
また、ナイジェリアで課題が目立った一方で、ガーナ政府はこの年末シーズンを観光需要の機会と捉え、政策パッケージとして扱い、入国施策の緩和などで需要を取りにいく姿勢も見られました。祝祭の熱量をどう受け止め、国家ブランディングにつなげるのかの調整が始まっている印象です。
In Lagos, December Is Time to Get Down and 'Detty'
②ニュースサマリー
文: Satoshi Shinada/Aoi Narita
本稿は、ニュースと、その分析・教訓をコンパクトにまとめたアップデートです。アフリカのクリエイター経済や音楽レーベル、欧州による文化支援の最前線を題材に、「次のカルチャーの震源地はどこか」「そこに日本はどう関わりうるのか」を考えるきっかけをお届けするものです。お読み進めいただく中で、皆さまの事業や投資の示唆となれば幸いです。(成田)
AFCONが開催!今年の優勝国は、開催国モロッコを抑え、セネガルに!
AFCON 2025 kicks off with French Montana, Davido and RedOne lighting up opening ceremony in Rabat
TotalEnergies CAF Africa Cup of Nations 2025 Commercial Success in Morocco leads to over 90% surge in Competition Revenues and a total of 23 Sponsors
Africa Cup of Nations commercial revenue up by 90%, says CAF | Reuters
ニュースの要点
AFCON(Africa Cup of Nations/アフリカネーションズカップ)は、サッカーにおいてアフリカ各国代表が2年に一度、アフリカ王者を争う大会です。今年はモロッコで開催され、結果は優勝セネガル、準優勝モロッコ、3位はナイジェリアで閉幕しました。
ニュースの意義
AFCONは、1957年に始まった歴史ある大会で、近年は欧州主要リーグで活躍するアフリカ出身選手の存在感も相まって注目度が高まっています。国別の熱狂が強く、選手のスカウトの機会としても重要です。加えて、スポンサーや放映権の価値が上がっている点も見逃せません。広告・スポンサー・放映権・デジタル配信・現地消費が一気に動き、サッカーにとどまらずエンタメイベントとしての存在感を増しています。
AFCONのオープニングでは、著名アーティストのパフォーマンスが恒例になってきました。今年の出演アーティストは、開催国モロッコにルーツを持つラッパーのFrench Montana、L'Artiste、Lady Gagaなどの楽曲も手がけたプロデューサーのRedOneに加え、Afrobeatsの顔として知られるナイジェリア出身のDavidoです。
また今回のAFCONでは、大会の商業価値の拡大がしばしば言及されています。AFCONを運営するCAF(アフリカサッカー連盟)によると、モロッコ大会で商業収益が約90%増加し、スポンサー数も2021年の9社から、2023年17社、今回の2025年には23社へと拡大しました。
スポンサーには日用品メーカーや通信企業などが並ぶ中、今年は日本企業も2社入っています。1社目はSUZUKI、もう1社はサッカーゲーム「eFootball」を運営するKONAMIです。KONAMIはAFCON 2025および2027の「Official Gaming Sponsor」となり、eFootball内でAFCONを再現する権利(独占ゲーミング権利)を確保したと発表しています。これはスポーツイベントのIPを、ゲーム内イベントやデジタルアイテムなどへ展開できる余地が広がったことを意味します。
放映権についても動きが活発です。CAFは、2025年モロッコ大会が「180以上の地域に到達」したと説明しており、欧州だけでも30以上の地域で20社とパートナー数を増やしたとしています。一方でNetflixは、サブサハラ・アフリカ向けに「AFCON Daily Show(毎日のハイライト)」を放映したり、ドキュメンタリーを作成することが決まっており、Netflixのアフリカ戦略にスポーツが拡大組み込まれ始めています。
今年のスポンサー一覧
英酒類大手 Diageo が、ケニアの酒類大手 East African Breweries(EABL) の 持分65% を、日本の アサヒグループホールディングス に 23億ドル で売却することで合意
Diageo sells East African Breweries stake to Asahi for $2.3 billion | Reuters
ニュースの要点
日本企業によるアフリカでの買収案件としては過去最大となる本件は、アフリカにおける消費セクターの今後の明るい見通しを裏付けるものとなります。この買収により、アサヒはケニアでマーケットシェア一位のビール会社に躍り出ることになります。
買収金額について
今回の買収金額は30億ドル(4,600億円)となっており、日本企業による過去のアフリカ買収案件と比べても規模の大きさが際立ちます。ちなみに、過去第二位のアフリカ買収案件はNTTによる南アフリカDimention Data買収で2,860億円(2010年)、第三位は 豊田通商によるCFAO買収で2,345億円(2012年)となります。豊通が買収したCFAOは自動車、医薬品の卸・小売りを中心に、スーパーマーケット大手カルフールの店舗展開含めて、アフリカの消費者向けに巨大な販売網を構築しています。
戦略的意義
日本企業によるアフリカ二大買収案件が消費産業に関わるものであることは注目に値します。こうした日本企業の動きは、世界で最も若い人口が2100年まで増え続けるアフリカ市場の成長ポテンシャルを長期的に取り込む戦略的なものであるといえます。
ニュースの意義
人口の中央値が19歳であるアフリカ市場において、アルコール消費はある意味、エンタメ消費の先行指標という面をもつと同時に、若者のトレンド・ライフスタイルに強い影響力を持っています。
アフリカでの販売に力を入れるGuinness、Heineken、Jameson、Hennessy、Smirnoff、Absolut等、大手アルコール飲料メーカー各社はアーティストやDJとのタイアップ、ファッションやスポーツイベントの共催、音楽ライブやフェスの主催/スポンサーシップにおいて、しのぎを削っています。また、ドイツの蒸留酒メーカーであるジャガーマイスターは、ナイトライフ・エンターテインメントに特化したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を運営しており、アフリカでイベントのチケットプラットフォームであるHustle Sasaに投資しています。
今後、アサヒビールによるアフリカビール事業とIP・エンタメイベントのコラボ可能性にも目が離せません。
(写真)
2025年10月1日、ナイジェリア独立記念日にJamesonがラゴスOrange Islandで主催したフェスの様子(撮影:品田)
スキンケアブランドTopicalsが資金調達。ナイジェリアのアーティストRemaやWNBA(Women's National Basketball Association)のAngel Reeseらも出資
ニュースの要点
Topicalsは、湿疹(eczema)や色素沈着などの肌悩みを、効果が期待できる処方×ポップなブランド設計で扱うGen Z向けスキンケアブランドです。創業者のOlamide Olowe(ナイジェリア出身)は自身の肌悩みを起点に、肌トラブルをネガティブに隠すのではなく、堂々と話せるカルチャーを作ってきました。米国中心に成長し、Sephoraで購入可能で、アフリカではオンライン購入が可能になっています。今回、Topicalsは資金調達を行い、ナイジェリアのアーティストRemaやWNBAのAngel Reeseらが参加しました。
ニュースの意義
アフリカ音楽スターが広告塔ではなく、資本参加+クリエイティブ関与でコスメ業界に入る流れが強まっています。さらに、メラニン量が多い肌(アフリカの人に多い)では炎症後色素沈着など独特の悩みが出やすく、その領域を正面から扱うTopicalsの立ち位置は、アフリカ/ディアスポラ市場とも相性が良いです。
象徴的なのが、目の下に貼る「Faded Under Eye Masks」です。クマ・くすみやむくみをケアするアイテムであるだけでなく、あえて貼ったまま撮影したり外出したりして、ファッションのアイコン(スタイルの一部)としても機能しています。つまりTopicalsは、効能と処方だけで勝つのではなく、肌悩みを隠さず、むしろ見せて語るという価値観を、プロダクトの見た目まで含めて設計し、カルチャーの側からスキンケアを主流に押し上げている点が特徴です。男性ユーザーからの支持も集めています。
リンク
https://www.instagram.com/p/DTBrt-XAkWC/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
③ Live Update from Africa 現地レポート
文: Hiyori Taira
2025年12月5日から7日にかけて、ヨハネスブルクにて南アフリカ最大級のゲーム・テクノロジーの祭典「rAge Expo 2025」が開催されました。
会場内ではゲームメーカーやハードウェア企業などによる最新ゲームの体験や大学対抗のeSports大会、ポップカルチャーのグッズ販売・イベントなどが行われ、ゲームやオタク文化を愛する人々が集まり、会場内は常に熱気で溢れていました。
rAge Expoは南アフリカで最も歴史のあるゲーム・テクノロジー・ポップカルチャーの大型イベントとされています。2000年代初頭からほぼ毎年開催されており(COVID-19パンデミックの影響により2020年度は中止)、今年は21回目となりました。今年度は180を超える出展者が参加。ゲーム・テクノロジーの分野ではNintendo Switch2やPlay station、現地開発者が制作したゲームの最新コンテンツ体験、eSports大会などが行われました。
(写真①)(写真②)(写真③)
写真①:大学対抗のesports大会。私が留学しているPretoria大学も出場。結果Stellenbosh大学が優勝しました。
写真②:こちらは個人対抗のesports大会。トーナメント制なのか、昼過ぎになると熱狂的な盛り上がりを見せていました。
写真③:PlayStation のコンテンツ体験。昼過ぎになると行列が出来ていました。
写真④:Nintendo switch2 でマリオカートのコンテンツ体験。空港やショッピングモールにも広告があるので、需要は高いとみられる。
カルチャー面では日本のアニメ・漫画、K-POPのグッズ販売やファン向けのイベントが開催されました。グッズ販売では、日本・中国・イギリスなどからの輸入品、出店者自身が制作した商品などが多く並んでいました。輸入品に関しては、どの店舗でもライセンス認定された商品が大多数を占めていたことが印象的でした。鬼滅の刃や呪術廻戦などのアニメ・漫画とポケモンが目立ちましたが、中にはサンリオやジブリのグッズ、中国から仕入れているという日本刀を展開している店舗もありました。また、ファン向けのイベントとして「Anime After Hours (AAH): 夜更けアニメ」が、特設ブースで常時開催されていました。K-POPのコピーダンスやコスプレ・カラオケ大会など日本・韓国のポップカルチャーに親しむコンテンツのほか、日本大使館によるJET・MEXTプログラムの説明会やJETRO主催の現地クリエイターの座談会、Pentelによるらくがきブースの設置など、日本企業が共催したイベントも多数開かれ、いずれも大きな盛り上がりを見せていました。
筆者(平)はイベント最終日に会場に出向き、カルチャー面にフォーカスして会場を回りました。グッズ販売の出店者は、普段からオンラインで商品販売をしている個人事業主であるケースがほとんどで、彼ら自身が好きなアニメや漫画・キャラクターの良さを更に広めたいという共通の思いがありました。費用の関係で、実店舗を既に持っている/開業予定、あるいは仕入れ先に専属バイヤーを雇用しているというケースはごく僅かであり、実際に自ら日本に渡航して仕入れているというケースも稀でした。その中で、ライセンス認定がある商品やより幅広いアニメや漫画のグッズをもっと展開したいという点で、日本企業との協業を強く望む声は多く聞かれました。
Anime After Hoursは、普段はwhatsappで南アフリカのアニメ・マンガ好きコミュニティを運営している団体です。去年設立したばかりで、イベント参加は初とのこと。現地在住の日本人も運営スタッフとしてイベントを盛り上げていました。日本をはじめとする東アジアのポップカルチャーを愛する人々同士を繋げ、南アフリカのオタク文化をさらに盛り上げていきたいという理念のもと活動しています。実際に、K-POPのコピーダンスライブやカラオケ大会(アニソンなど)では、ブースを訪れた人々が一体となって楽しんでおり、日本エンタメの浸透が今後さらに進んでいくと感じました。
また、全ての参加者が熱心な"オタク"で、それぞれの「好き」に誇りを持ち、大きな愛と情熱を注いでいることがとても印象的でした。話を聞いた出店者の方々は20代~30代くらいの方で、高校生の頃(10年前くらい)から日本のアニメやマンガにハマりだしたケースがほとんどでした。その多くは日本への渡航歴が無く、日本に行くことが夢だと語っていました。彼らのビジネスが今後さらに拡大し、実際に日本を訪れ、南アフリカのオタク文化をさらに盛り上げていってくれることを期待します。
(写真⑤)(写真⑥)(写真⑦)
<写真の説明>
写真⑤:pentelのらくがきコーナー。Anime After Hoursのイベントブースの真後ろに設置してあり、老若男女問わず、好きなアニメキャラなど皆が思い思いのイラストを描いていました。
写真⑥:アニメのフィギュアをメインとして販売していたお店。東京や大阪からオンラインで仕入れているそう。
写真⑦:サンリオ・ジブリ・K-POPの商品を販売していたお店。オーナーは10代後半から20代前半くらいの女性の方。お母様にサポートしてもらいながらビジネスを行っているそう。韓国にバイヤーを雇い、そこから商品を仕入れているとのこと。ジブリ公式の商品を展開したく、直接連絡したが、返信が無く諦めた…。
写真⑧:手作りのポケモンボールやその他ポケモン関連の商品を販売するお店。中国から輸入することがほとんどだが、ポケモンボールの材料は日本から調達しており、制作のインスピレーションも同時に受けているとのこと。オーナーの女性の方は日本への渡航歴も2回あり。
写真⑨:テンポラリータトゥーのお店があったので私もやってもらいました(笑)様々なキャラから選べる中で、選んだのはピカチュウ!2〜3日は持つと言われましたが、帰宅後シャワーを浴びたら一瞬で全部取れました…。
写真⑩:⑦のお店で売っていたTシャツ。オーナーの女性が自らデザインしたという。
写真11:南ア国内に複数店舗を構えるOtaku kulture オタクツ文化というお店もこのイベントに参加。アニメキャラでラッピングした車には、老若男女問わず多くの人が集まっていました。
写真12:手作りのアクセサリー、毛糸ぬいぐるみなどを販売するお店。ぬいぐるみはオーナーの女性のおばあさまが制作しているとのこと。
④ アフリカ in JAPAN
Deyemi Okanlawon氏がNHKの放送100周年記念ドラマ「火星の女王」に出演
文 : Aoi Narita
放送100年特集ドラマ「火星の女王」 新たな出演者と語り&主題歌決定のお知らせ
ナイジェリアの人気俳優 Deyemi Okanlawon(デイェミ・オカンラウォン)氏が、NHKの放送100年企画の本格SFドラマ『火星の女王』に出演しました。2025年12月放送(全3回)のSFドラマで、舞台は今から100年後。火星と地球をまたぐ物語が描かれました。
Deyemi氏は、ナイジェリア映画界、通称Nollywoodを代表する俳優の一人です。近年は『Omo Ghetto: The Saga』『King of Boys: The Return of the King』『Blood Sisters』など話題作にも出演しており、これらはNetflixでも視聴可能なため、ナイジェリア国内にとどまらず海外での存在感も高めています。Deyemi氏のInstagramのフォロワーは約120万人にのぼります。
同氏は約1年前に来日し、3か月ほど日本に滞在して本作の撮影に参加していました。筆者(成田)が日本で本人に会った際に出演に至った経緯を尋ねたところ、NHKがアフリカ系の役を探している中で、オンラインオーディションを経て選ばれたとのことでした。選考の決め手として、演技力の高さが評価された旨も語っていました。
今回の出演は、アフリカのタレントがコメディ枠としてではなく、プロフェッショナルな俳優として日本の大型テレビドラマに本格的に合流した、象徴的な出来事だと言えます。アフリカ映画・映像作品は日本ではまだ距離がある領域ですが、こうした出演者とのコラボレーションを通じて、視聴者が親近感を持つきっかけが増えていくことは、文化交流の観点からも重要だと考えます。
(「アフリカのポップカルチャー市場を紐解く」の題名にて、JETROオフィスにて2024年12月にDeyemi氏とイベントを実施)
⑤ Today's Vibes by DJ Aoki
持たざる者たちのブリコラージュ:ラゴス発のMara Beatsが世界を変える
アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキです。
2025年12月にナイジェリアで開催された展示会「Mara Mania」は、社会の周縁から生まれたストリート音楽「Mara(マラ)」が包含する文化的背景をアートとして捉える画期的な試みでした。
Afrobeatsのカウンターのように現れたMaraは、ラゴスのスラムに住む「持たざる若者たち」の武器でした。彼らは安価な機材とSNSを使い、爆破音や叫び声、そしてネットミームなどを高速ビートに乗せてミックスしました。こうした音楽は当初「粗野な悪ふざけ」と冷遇されてきましたが、RemaやSeyi Vibezらの有名アーティストがMaraのビートを取り入れたことで風向きは大きく変わりました。
この展示会が重要なのは、Maraを単なる音楽ではなく、高度な脚さばきによる身体表現や、若者たちのコミュニティ形成、そしてデジタル表現と密接に結びついた「総合芸術」であると捉えた視点です。今後Maraは世界中のダンスフロアに浸透するでしょう。Nyege Nyege Fesでの熱狂や世界的DJ Skrillexによる支持はその序章に過ぎません。Maraの真価とは、混沌とした時代において壊れた音さえもアートに変えてしまう、現代のストリートが放つ「ハイパー・ブリコラージュ」にあるのです。
紹介曲 Maraのシーンを代表するアーティスト「DJ Khalipha」の「Mara Pass Mara Beat」
⑥おわりに
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。編集者として今月号を通じて見えてきたのは、アフリカの音楽・スポーツ・ゲームなどのエンタメが、それぞれ別の市場ではなく、互いに影響し合いながら次のムーブメントを形づくっているという事実です。Detty Decemberの熱狂も、AFCONの商業化も、現地のオタク文化の広がりも、すべては「熱量が集まる場所に、ビジネスの芽が立ち上がる」ことを示しています。
JAEBCとしては、こうした兆しを一過性で終わらせず、日本側との協業・投資と接続する具体的な機会づくりを進めていきます。また、2月にはイベントも実施する予定ですので、来月号もお楽しみにください。
イベント案内
JAEBCとCOTSCOTS LTD.が、2026年2月18日に日本のエンタメ業界向け公開イベント「アフリカエンタメ元年宣言」を開催します。アフリカで急成長する音楽・映画・アニメ・ゲームの最新動向を共有し、日本コンテンツの進出や現地パートナーとの協業可能性を議論するのが目的です。東アフリカでの日本アニメの受容、ナイジェリアの音楽・映画産業、今後5年の日本企業の関わり方を3つのパネルで扱います。是非ご参加ください。
日時:2026年2月18日 18:30 開場 19:00 開始
会場:EIGHT 東京都港区高輪 2-21-2 THE LINKPILLAR 1 SOUTH 8F(JR 山手線、JR 京浜東北・根岸線 高輪ゲートウェイ駅直結)
運営:JAEBC、JAEBC Youth
対象:エンタメ業界関係者、興味のある学生
参加費:無料
参加人数:50 名程度(想定)
終了後はアフリカのワイン等を用意したネットワーキング(DJあり)も実施します。